亜鉛と味覚〜「ミネラルの知られざる世界(18)」

「食べものの味がわからなくなる」しかし、本当はたった一種類の微量ミネラル、亜鉛が不足しているためにおきている変化といわれる。実際、血中の亜鉛レベルの低い人におこりやすいものだし、亜鉛をサプリメントで補給すれば十分改善が期待できることも報告されている。


亜鉛は約200種類の酵素に補酵素として使われているのだが、とくに新しい細胞をつくったり、成長させたりする酵素とかかわりが深い。だから、新陳代謝が激しい組織とか細胞ほど、亜鉛不足の影響が出やすいのだが、味覚との関連について紹介する。


舌をさわるとザラザラするのは舌の表面に無数の突起物があるからで、この突起の中には食べたものの味を感じとる「味蕾」(みらい)というセンサーがつまっている。味蕾は新陳代謝の激しい組織の一つなのだが、年をとるにつれて数が少なくなり、それだけ味を知覚する能力は落ちてしまう(その分いろいろな味の経験を積んでいるので、卜ータルな味の感度は必ずしも低下しない)。


味蕾の数が減っていくのはある程度は自然な老化現象なのだが、最近は比較的若い年齢から「味を感じない」とか「何を食べても同じ味しかしない」と訴える味覚障害が増えている。この原因として指摘されているのが亜鉛の欠乏だ。味蕾は少し古くなっただけですぐに新品と入れ換える必要があるので新陳代謝が激しく、亜鉛の不足の影響が現れやすい組織の一つだと考えられている。


日本では日大と大阪大付属病院が専門の「味覚外来」を設けているが、味覚障害の人には血液中の亜鉛濃度が低下しているケースが多く、亜鉛を投与する治療が効果をあげている。早ければ一週間で味覚が戻るケースもあるそうだ。以前はこれといった治療法もなかった味覚障害なのだが、亜鉛を投与するだけであっけなく治せるようになっているのである。ただまったく味を感じなくなっていたり、おかしいと感じてから一年以上ほうっておいた人などは比較的治りにくいという。


米国では、1980年代の中ごろから、拒食症と亜鉛欠乏の関連も注目されてきた。加工食品に偏った食事をしたり、極端なダイエットをしたりしていると、亜鉛が不足しやすい。亜鉛の不足によって、さらに食事への関心が薄くなり、食欲もなくなってしまう拒食症の下地がつくられやすくなるというのである。実際に、亜鉛の投与が拒食症の治療に効果をあげたケースも報告されている。



★丸元淑生氏の著作選「ビタミン・バイブル」

ビタミン・バイブル完全版 ( 著者: アール・ミンデル / 丸元淑生 | 出版社: 小学館 )

ビタミン・バイブル完全版 ( 著者: アール・ミンデル / 丸元淑生 | 出版社: 小学館 )

この本にはビタミンやその他栄養素について知りたいことが、ほとんど1冊に網羅されている。それと、病気の症状に応じたビタミンの効能・選び方、どの食品に多く含まれるか、さらにタンパク質(アミノ酸)、脂肪、ミネラルの効能・摂り方までおよそ病気の予防と体調不良時の対処法の案内役として、また健康維持のための指南書として是非お奨めしたい。

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